crmreviews

ニュース&レビュー

ビッグデータを使った流通業のアドテク参入

Pocket

Tescoのビッグデータ子会社が、最先端のアドテクSociomantecを買収

正式なアナウンスは無かったのですが、世界第2位の流通事業者Tesco* が子会社のDunnhumbyを通じて、レコメンド型DSPの有力企業であるSociomantec Labsを4月に買収しました。流通業の持つビッグデータが、それを活用するアドテクノロジーを獲得したことに注目が集まっています。今回は、流通業の顧客データベースを取り巻く状況をまとめてみました。
* Deloitte, Global Powers of Retailing 2014 Retail Beyond

DunnhumbyはTescoのビッグデータ・アナリティクス子会社

Tescoはご存知の通り、イギリスをベースとしたGMSで、FSP(フリークエント・ショッパー・プログラム)の会員カードなどで非常に有名な企業です。その会員カードである、Tesco Clubcardをレジで提示することで、いつ、何を、どれぐらいかったかというPOSデータが会員情報と紐づけられて蓄積されます。DunnhumbyはもともとTesco Clubcardの立ち上げに関わっていたマーケティング会社で、2006年よりTescoの完全子会社となり、会員データを分析してTescoのマーケティングを支援しています。実際にどのようなことを行なっているかは、日経ビジネスONLINEのローランドベルガーさんの記事で紹介されていました( http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20131209/256852/ )。

さて、そのDunnhumbyですが、現在では3,000人の従業員と全世界にオフィスを持つ、流通業向けアナリティクスで大手の企業となり、Tesco以外の流通事業者向けにもサービスを展開しています。7億人の消費者の購買データを持つと言われており、加えて、流通業のプライシング最適化ツールを提供しているKSS Retail、トライアル製品を通じてバズを促進させるBzzAgentも買収を通じて傘下に持っています。

Sociomantic LabsはEC向けのレコメンド型DSP大手

Sociomanticはドイツをベースに200人の従業員をもち、100億円以上の売上を持つと言われているEC向けのレコメンド型DSP(RTBで広告を配信するシステム)ベンダーです。レコメンド型DSPの最大手はフランスのCriteoで売上600億円以上、少し売上は離れていますがCriteoの競合としてよくあげられるベンダーです。

このタイプのDSPでは、ECサイト内の訪問者の行動履歴・購買履歴データを解析し、閲覧した商品やレコメンドする商品を組み合わせて、ダイナミッククリエイティブと呼ばれるバナー広告を表示させます。顧客の関心に合わせて自動的に商品をレコメンドし、購買につなげるアクションを引き出すため、非常にCRMに近い広告配信技術と言えます。

購買履歴データ+広告配信技術

DunnhumbyのCEO、Simon Hayは、消費者のエンゲージメントと店舗・オンラインを問わないロイヤリティの醸成が一番の目的であり、Sociomanticの持つパーソナライズされた広告技術は非常に価値があるとコメントしています。また、Sociomanticの創業者であるThomas Brandhoffは、消費者とのタッチポイントをよりパーソナライズでき、そのメッセージの関連度を高めていくことができるようになるとコメントしています。

もちろん、Dunnhumbyのノウハウである、One to Oneのクーポンオファリングなどは同じ組み合わせが3人しかいないなど、非常に高度と言われていますし、レコメンド広告配信には非常に有効と考えられます。しかしながら、注目すべきは、そのオフライン・オンラインをまたいだ購買履歴データのボリュームです。DunnhumbyはTescoを中心としたオフライン7億人の購買履歴データを持ち、Sociomanticは多数の広告主のオンラインの膨大な購買履歴データを持っています。今後、流通業のオムニチャネル化が進み、店舗やネットスーパーなどで多様な購買行動が広がってきた際に、これは非常に有効な資産になるのではないでしょうか?

例えば、これまでDunnhumbyはTescoの会員データがメインだったのが、今回Sociomanticの広告主たちの購買データも入手できたのではないかと考えられます(両社とも言っていませんが)。そうすると、Tesco会員データに加えて、その会員のオンラインでの購買品目・金額などが分かれば、品目毎のワレットシェアがより正確に分かり、店舗・ECサイトなどチャネルごとの購買行動いわゆるカスタマージャーニーから、購買サイクル、金額などを加味してタイミングや関心に最適化したオファリングで販促をかけることができるだけの基盤ができてきます。もちろん理論上の話ですが。。

ただし、現実にはDMPベンダーは既にオフラインとオンラインデータを統合して多数のオーディエンスデータを提供していますし、ビッグデータの活用はより高度になりつつあります。CRMは自社の持つタッチポイントとそこから得られるデータを境界として、営業、マーケティング、カスタマーサービスの最適化を進めるシステムでした。アドテクの発展は、CRMで取り扱うデータを拡張し、より広範囲に消費者をとらえて施策を展開することを可能にしてきています。Dunnhumbyの今回の買収は、CRMとアドテクの統合とも言え、今後大きな意味を持つことになるかもしれません。

Salesforce.com+Datalogix

時は重なり、同じく4月にSalesforce.comとオフラインデータプロバイダーのDatalogixの提携が発表されました。Datalogixは1兆円以上ものオフラインの購買履歴データを、Cookieと紐づけてDMPやDSP、アドネットワークと組み合わせて、広告配信でのターゲティングに活用するサービスを提供しています。例えば、どのようなクルマに乗っているのか、オーガニック食品などのCPGを選ぶ人か、オフラインで購入している商品のカテゴリーなどでターゲティングができるサービスです。

Salesforceは元々data.comで、D&Bの企業データや、Jigsawの企業内個人データをプラットフォームに組み込み、名寄せやマーケティングに使える仕組みをもっていましたが、今回の提携ではMarketing CloudのExact Targetでの活用ということです。現状、広告関連としてはsocial.comでFacebookの広告枠を買える機能のみのため、そのターゲティング精度を上げるものとして活用されると考えられます。

ただ、今後はCRMやExact Targetから優良顧客データを抽出し、Datalogixの属性データと組み合わせてLook a Likeモデリングで見込み顧客を拡張・抽出してディスプレイ、モバイル、動画、ソーシャル向けに広告配信できるようなサービスが出てくるかもしれません。

まとめ

昨今ビッグデータの活用という言葉をよく聞きます。企業が所有するデータは膨大ですが、その質は企業毎にバラバラなのではないかと思っています。自社の持っている購買履歴データを他社のものと名寄せするには、カテゴリーがしっかりついていないといけませんし、その網羅性や鮮度の維持など活用のために事前に踏むべきステップは数多く存在します。ビッグデータを活用したいと思うなら、まずはCRMでデータ品質を上げなければ、と思いますね。

著者: crmreviews

Pocket


投稿日:2014年6月7日 カテゴリ:CRM マーケット トップニュース