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顧客体験マネジメントが現在のビジネスで必須になっている理由 その4

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前段

前回の( 顧客体験をビジネスの解決策にする)までの課題はとても根本的なものなので、顧客体験マネジメントの実現は難しそうに感じられるかもしれません。しかしながら越えられないハードルではありません。今回はどういったアプローチでその壁を越えて行けばいいのかについてのお話となっています。非常に長いエントリですが、プロジェクト開始までの包括的な内容になっていますので、ぜひ。

第4回:お勧めするアプローチとリスク

これからのビジネス環境においては顧客を維持することが必須のことであることは言うまでもありません。そして、おそらくそれらの実践についても部分的には行っていたことと思います。そうです、部分的に行えていたことを全社レベルで横断的かつ広範囲に渡って実装することが難しいのです。

そこで、顧客体験マネジメントを展開する上での、シンプルなフレームワークをご紹介します。

  1. あまり外部の知恵を求めすぎることをせずに、あなた自身の顧客体験戦略を始めよう。
    多くの企業にとってこれは、これまでの商品やサービスにフォーカスしていたやり方から顧客中心の企業に切り替わるという、抜本的な変化となります。私がお勧めしたいのは、顧客体験向上チームを組織し、どの業務プロセスが有効で、どれがそうじゃないか、意見を求めることです。そして、得られた情報をパフォーマンス指標の基礎として設定します。そうやって、顧客体験マネジメントを実現することは、継続的な改善を積み重ねていくことであることが理解していきましょう。ここから、最も顧客が不満を感じているプロセスから順に優先順位付けし、継続的に改善を実践していく旅がスタートするのです。加えて、「顧客からの声」(VOC:voice of customer)プログラムを導入することはもちろんですが、私がお勧めしたいのは「従業員からの声」(VOE:Voice of Employee)分析も導入することです。これは私の経験ですが、ハッピーな従業員とハッピーな顧客には相関関係があります。もしくは、顧客満足度・ロイヤリティと従業員満足度とも置き換えられるかもしれません。あなたのスタッフを調査し、顧客体験を改善するための優先順位と比較してみましょう。

  2. 経営幹部にプロジェクトの総責任者であるチャンピオンを任命しましょう。
    顧客体験は、企業全体に浸透させなければならないために、社内文化の変化を引き起こします。それゆえそれを支えるスポンサーは権威と信用があり、企業全体からよく見える人である必要がありますので、取締役クラスが最適です。また、決して一つの部門や地域に偏ってはいけません。このチャンピオンはスポンサーである取締役にドットライン(直接の上司ではないが間接的に上役となる関係)をもちつつ、CEOに対してダイレクトに報告をあげるべきです。

  3. 測定可能な目標を設定しよう。
    多くのビジネスリーダー顧客体験向上プロジェクトを開始する理由はこれが正しいと思っているためです。これは理解しやすい考え方ですが、実にナイーブで、時間と費用をかけてプロジェクトを推進するには根拠が弱いものになります。そのため顧客体験のプロジェクトは、予算がタイトになってくると、終了させられてしまいます。Global Customer Experience Disruptive Studyの調査によると、顧客体験プロジェクトの目的で上位に位置づけられているのは:既存ビジネスの成長(50%)、顧客の維持(48%)、競合に対する差別化(44%)、新規顧客の獲得(35%)、オペレーションの効率化(33%)、顧客の保護(22%)となっています。このような経営目標を測定可能な数値として設定し、そこからドリルダウンして施策やオペレーションに落とし込んでいくことで、強いプロジェクトに成長します。

  4. 現在の企業文化を分析しよう。
    顧客の重要性がしっかりと社内で理解されていますか?もし、文化として定着しておらず、タッチポイントの全てで顧客のニーズを満たすことができていないようであれば、まずは企業文化の覚醒が必要になります。上から下まで企業の中の全ての人が、事業が事業となる真の目的とは顧客にベネフィットを提供して満足させることにあるということを理解しないといけません。ただし、全ての人が理解力、忍耐力、共感力を顧客に対して持っている訳ではないということも、不幸な現実としてあります。そこで、望ましくない行動を一掃し、望まれる態度に対して見返りを与えるために、新しいインセンティブが必要になります。プロジェクトチームはその文化を体現する具体例を作ってリードし、経営陣は日常の役割の中にどのように適用していくか、スタッフに明確に理解させるために継続的なトレーニングを実施していく必要があります。

  5. プロセスの評価手法を作ろう。
    ここまでくると、プランが固まり、関係者から承認をもらって、あなたは実行直前の段階まで来ています。次にあなたがすべきなのは、改善が必要な業務プロセスを選択、優先順位付けすることです。さらに、その各プロセスにオーナーを設定し、改善度を測定する手法を開発し、業務プロセスマップ(別名カスタマージャーニーマップ)を開発しなければいけません。これはプロセス改善を進めるのに有効です。加えて一つ提案したいのが、各プロセスのパフォーマンスをモニタリングする、スコアリングシステムの構築です。4つの主要な顧客志向の測定項目、利便性、応答性、信頼性、関連性を含み、測定しやすい数値で代表できるKPIとして設定します。例えば、既存顧客からの問い合わせ・クレームに対する回答・解決時間などや、企業や商品に対する好意的な評判のソーシャルネットワークでの量と割合などを設定します。

  6. カスタマージャーニーマップを作ろう。
    顧客を喜ばせるために、全てのタッチポイントで顧客をエンゲージメントできるようにしましょう。以下の図は、もともとは私の友人であるEsteban Kolskyが作成し、Oracleの顧客体験戦略で使用されているもので、下記のカスタマージャーニーに沿った主要プロセスを表したダイアグラムです。

    あまり大した違いではありませんが、カスタマージャーニーは、カスタマーライフサイクルではありません。購入(BUY)と所有(OWN)の連続したつながりであることを理解しましょう。

  7. 顧客のステージ別に最適なチャネルを設定しよう。
    顧客は目的に応じて異なるコミュニケーションチャネルを使用します。顧客体験をどのように形で提供しようかとシミュレーションできれば、顧客の行動とコミュニケーションチャネルの関係性を理解することができ、連続的なプロセスを設計することができるようになります。下記は各チャネルとカスタマージャーニーとの関係を描いた表です。

    一度カスタマージャーニーが描かれると、カスタマージャーニーのそれぞれのフェーズごとに、ペルソナ(特徴を代表する仮の人格)、最適なコンテンツ、エンゲージメントツールが設計できるようになります。これにより、カスタマージャーニーの各フェーズに対するコミュニケーションチャネルの最適な配置が可能になります。

  8. テクノロジーの導入を検討しよう。
    私からのご提案は、まずデータストレージ戦略をはっきりさせること、つまりデータが検索、利用されるタイミングをはっきりさせてから、データをどのように保持するか決めることです。例えば、CRMやERPのデータは顧客のためのものか?多くの企業ではMDM(Master Data Management)の導入も進んでいませんので、代わりに使うこともできません。あなたは個別業務目的で構築された戦術的システムをリンクさせ、チャネル全般、デバイス全般に渡って情報を統合・編成する必要があります。
    このエクササイズの途中で目的とする業務プロセスとそのゴールに必要なデータがどのようなものか、決めておく必要があります。データはきれいに正規化されておらず、また構造化されたサーバーに格納されていないことが多いです。この場合、ビッグデータは一つの有効な回答になります。増大するボリューム、スピードに対応し、多様な非構造化データ・外部データを取り扱い、業務プロセスで利用できるようにします。
    ビッグデータは、分散化したデータを集約・同期し、目的に応じて顧客の全体像を明らかにすることができます。特に協調したいのは同期の観点です。カスタマーサービスに使うためにデータを統合することではありません。例えば、顧客の行動、購買履歴・パターン、デモグラフィック・文化的性向などについて、戦略的なインサイトが得られます。また、データを業務プロセスで使うには、検索ツールや業務プロセスマネジメント(BPM)、ワークフローツールとの連携が必要です。もちろん、どのようなデータか、どのチャネルで使うかによって取捨選択します。

  9. チャネルの活性化を検討しよう。
    これまで検討してきたことをクロスチャネルのサポートで利用します。顧客がどのチャネルを選ぶか、エンゲージメントするかなど、企業にとっては分からない話ですが、顧客はあなたがそれを知っていることを期待しています。さらに、あるチャネルで提供した情報がシームレスに全チャネルに転送され、全スタッフにすぐに共有されることを期待しています。

    最近のBuzzワードでもありますが、オムニチャネルサポートはなかなか実現がむずかしいです。企業は過去、増え続けるタッチポイントとデバイスに対してカスタマーサービスを提供するため、次々にサイロ型の顧客対応アプリケーションを導入してきました。過去のこのような取り組みに失敗しているために、スタッフは複数のシステムを検索して回答をしており、電話の時間が長くなり、顧客の離反率が高くなり、ファーストコールでの解決率が下がり、顧客満足度のスコアが低くなり、1顧客あたりにかかる、対応時間と解決までのコストが高くなっています。

  10. 自発的な学習サイクルを構築しよう。
    テクノロジーの支援により、パフォーマンスが期待できる形でカスタマージャーニーマップと業務プロセスの構築が終えると、それぞれのサイクルが自発的に学びはじめ、顧客のフィードバックから改善が進むようになります。ただ、顧客の期待は常に動いて先を見ており、顧客体験戦略も応じて変化していく必要があります。


共通するリスク

顧客体験の原則をはっきりと理解したにもかかわらず、ほとんどのビジネスリーダーは実行で失敗してしまっています。O’Keeffe の顧客体験に関する調査によると、91%の企業が顧客体験のリーダーを求めている一方で、たったの37%しか公式に顧客体験のイニシアティブを始めていない現状があります。面白いことに、この調査結果はIBMが2年前に行った顧客体験の調査結果とほぼ一致しています。どういうことかと言うと、ビジネスリーダーはビジョンを持っているのですが、プランの実行面で大きな困難を抱えているということです。加えて、顧客の期待は一般的な企業の能力を超えてしまっているため、ソーシャルメディアを通じてこれをさらに悪化させ、失敗の際のコストは継続的に増えていく傾向にあります。

顧客体験マネジメントの導入は、企業文化との関連を過小評価している傾向にあり、これはCRMの導入と同様です。また、調査ではCRMと顧客体験プロジェクトの双方が企業文化との関係性を管理できていないため、多くの場合失敗しているようです。
多すぎるビジネスリーダー達が顧客体験のプロジェクトをチェンジマネジメントの計画もなしに始めてしまっています。これは共通のリスクです。


この記事は、CRMsearch.comに掲載された「The Business Mandate For Customer Experience (CX) Management By Chuck Schaeffer」を翻訳した内容です。CRMsearch.comは様々なCRMアプリケーションやCRMに関する有益な記事を紹介しているサイトであり、本サイトとはパートナー関係にあります。

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投稿日:2013年10月14日 カテゴリ:トップニュース ホワイトペーパー